ピアノには大きく分けてグランドピアノとアップライトピアノがあります。諸説ありますが、「ピアノ」といえば本来は「グランドピアノ」のことを指すそうです。また、グランドピアノの方が歴史も古くなっています。構造的・機能的な違いもあります。これからピアノを購入する方には、両者の違いを理解して、どちらが自分に合っているのかを比べてみましょう。
グランドアップピアノとアップライトピアノ、2つとも黒鍵36・白鍵52となっているのが一般的です。指先で鍵盤をおすことでハンマーが動き、弦を叩いて音をだします。グランドピアノは主にコンサートで使用され、アップライトピアノは家庭用にコンパクトにされているのが特徴です。歴史的に古いのは先にも述べた通り、グランドピアノでアップライトピアノはあとに誕生しました。
グランドピアノは鍵盤を押すことによって、ハンマーで平面的に張られた弦を叩きます。つまり、弦の下から叩いて音を出すということになります。この場合、力の方向が一定方向にかかりますので、音の強弱を幅広く取ることができます。ちなみに、グランドピアノの原型はチェンバロという楽器です。弦を弾いて音を出している楽器ですが、ピアノのように強弱をつけにくく、これを不満に思ったイタリアのクリストフォリという人物が、1700年代に弦をハンマーで叩くという現在のピアノの原型をつくりました。これがグランドピアノの始まりといわれています。
アップライトピアノはグランドピアノよりも少し遅れて歴史に登場します。1840年頃、パリで現在の形になったといわれています。アップライトピアノの場合は、グランドピアノと違い弦が垂直に張られています。そのため、鍵盤を押してもハンマーと同一方向でない(鍵盤とハンマーが平行ではなく90度の位置にある)ということが大きな特徴となります。
グランドピアノとアップライトピアノは音が出る仕組みが違います。その違いによって生まれるのが「表現力」の違いです。グランドピアノは打弦する力がアップライトピアノの2倍から3倍といわれていて、音の強弱の幅を広く取れます。また、ハンマーが戻りきらなくても、次の音が出せるために、素早い連打が可能になるのです。一方アップライトピアノの場合、ハンマーを戻すにはバネの力が必要なため、連打数は限られてきます。グランドピアノでは1秒間に14回以上連打可能とされていますが、アップライトピアノの場合は7回程度とされています。また、そのほかの音を出すアクションの構造もグランドピアノのほうが幅広く調整できるため、楽曲の表現に差が出てくるのです。
グランドピアノとアップライトピアノの違いは、上記のように音が出る仕組みが違うだけではありません。音の響きにも違いがあります。グランドピアノは元の長さを長く取っていますから、音質にゆとりがあり、重低音も表現できます。そして饗板が大きく開くことによって反射音や直接音を聞きながら練習ができます。
一方でアップライトピアノでは、饗板が小さく、音もこもりがちです。演奏しながら聞ける音は、躯体からの透過音を聞くことが多く、細かい表現にはあまり向いていないといえるでしょう。ピアノはその躯体自体に共鳴する音も重要ですから、音質はグランドピアノのほうが上回っているといえます。
グランドピアノとアップライトピアノでは、ペダルの機能も異なっています。グランドピアノの場合シフトペダルでは音量だけではなく打弦の位置をずらすことで音色にも変化を与えます。一方アップライトピアノの場合では、左ペダルの役割としてハンマー全体が弦に近づくことでソフトな音になります。<グランドピアノの中ペダルでは、直前に押した鍵盤のダンパーだけが弦から離れ、その音だけに余韻が残りますが、アップライトピアノでは音量を下げる効果があります。右側のダンパーメダルだけは同じ機能で、鍵盤から指を離してもダンパーは戻らず、弦は長く振動を続ける機能を持っています。
ご紹介してきたように、グランドピアノとアップライトピアノを比較すれば、演奏するには、グランドピアノのほうが優れているといえるでしょう。主に音の幅が広くて伸びやか、音の濁りが少なく微妙な表情も表現できる、細かな連打が思いのままにできる、などの優位点があります。しかし、アップライトピアノにも大きなメリットがあります。それは設置のしやすさです。グランドピアノよりも小さな躯体は、日本の家屋にも十分に置けるサイズです。グランドピアノのように場所を取ることがありませんから、家での練習用には非常に合っているといえます。どちらを購入するかはそれぞれの事情がありますが、ぜひ、参考にしてください。