グランドピアノの屋根は飾りではなく、音を反響させたり、音の調節をしたりといった機能面での役割があります。演奏者を基準にすると、屋根は右側から開くのが一般的。音は右方向へ強く飛んでいくよう設計されているため、ピアノのコンサート会場では音色が響いていく右側に観客席が配置されています。
屋根を開けた状態と閉めた状態では音色の響きが異なり、聞こえ方が変わります。ピアノの練習をする場合、できるだけ屋根は開いたほうがよいでしょう。本番では屋根は開かれるため、練習と本番で響きが違うと演奏時に戸惑ってしまう場合も。練習時にはできるだけ本番に近い状態で演奏を行うのが理想的です。
ピアノの屋根は角度で音の調整ができるため、屋根は3段階ほど角度が付けられるようになっています。
ピアノの音しか聞こえないソロや、他の楽器の音に負けてはいけないオーケストラでの演奏では、屋根を全開にします。
伴奏では、メインの楽器が他にあるため、半分だけ開ける、または完全に閉めて、主役の音色を邪魔しないようにすることも。また、ピアニストがピアノを弾きながらオーケストラの指揮者となる「弾きふり」をするような場合は屋根を外すこともあります。
グランドピアノとは異なるものの、屋根を開けることで音色の響きを良くすることは可能です。より音の響きを良くしたい場合は、上前板を外すことでより音色を響かせやすくすることもできるでしょう。
最初に確認するのは、ヒンジの芯棒が抜けていないかどうか。芯棒が抜けている状態で開けると、屋根が落ちる危険性があります。
ヒンジを確認した後、ピアノカバーを外してください。カバーをかけたままの開閉は、手が滑る、引っかかるなどのリスクがあるからです。
最初に屋根の前部分を開けます。次にメインとなる大屋根を持ち上げてから、突上棒の先端を持ち、受け皿に挿し込む流れで支えましょう。突上棒は先端を持ったほうが、スムーズに受け皿へ差し込めます。
よくある間違いとして挙げられるのが、正しい受け皿に突上棒を挿し込んでいないケースです。
ピアノの多くは、ロングとショートの2本、またはロング、ショート、ミニの3本の突上棒が備わっています。大屋根は各突上棒の長さに合わせた受け皿を備えていますが、受け皿を間違えて入れてしまうと危険です。大屋根と突上棒の角度が90度になるようにして、確実に受け皿へ入れましょう。
屋根を閉めるときに注意したいのは、指を挟む事故です。激しく落とすと指を骨折するリスクもあるため注意が必要です。
閉める手順は、開けるときとは逆の手順で行います。屋根を少し持ち上げてから、突上棒をゆっくり下ろしてください。同様にゆっくり屋根を閉めます。最後に譜面台が奥まで入っているのを確認して、前屋根を閉めてください。